こんにちは、NAO(@nao_wanderlust)です!
PTとして、働いていると学生さんを担当することがありますよね。
今年度はコロナ禍の中ですが、わたしの職場でもPTの実習生2名を受け入れました。
実習生の受け入れといえば、2020年の養成校入学生を対象に臨床実習のカリキュラムが変更になることはご存知ですか?
それに伴い、臨床実習指導者(バイザー)に求められる要件にも変化がありました。
そのため、わたしも昨年の初めに「臨床実習指導者講習会」に参加することに。
講習会では、私が学生時代に行った臨床実習との違いを感じる機会になりました。
今回は、講習会で学んだPT・OTのバイザーに求められる要件、臨床実習の変化点、学生の指導を進めるにあたって実際に使用した参考書を紹介します。
臨床実習が変わる?!3つの具体的な変更点
2017年にPTやOTの養成校におけるカリキュラムが改定されました。
この改定の背景には、
- 高齢化の進展に伴う医療需要増大や地域包括ケアシステム構築等により、理学療法士及び作業療法士に求められる役割の変化
- PT・OTの学校養成施設のカリキュラムについて、各施設で様々である実態を踏まえ、臨床実習の在り方や質の向上が求められている。
といったものがあります。
そして、具体的に変わることは3つ。
- 臨床実習指導者(バイザー)の要件
- 臨床実習1単位あたりの時間数
- 臨床実習施設に関する要件
1つずつ詳しくみていきます。
臨床実習指導者(バイザー)の要件について
従来は、臨床実習指導者(バイザー)は臨床経験3年以上のスタッフが担当することが多かったのではないでしょうか。
日々の業務にも慣れてきて、次のステップということで学生指導を任されることってよくありますよね。実際に、わたしも3~4年目になって、新人教育や学生指導を担当する機会がありました。
今回の改定では、バイザーの要件について以下のように明記されました。
- 免許取得後5年以上業務に従事したもの
- いずれかの講習会を修了したもの
①臨床実習指導者講習会
②理学療法士・作業療法士・言語聴覚士養成施設教員等講習会
③臨床実習指導者中級・上級研修
今までと違い、5年以上の臨床経験かつ講習会への参加が義務付けられています。
2020年の養成校入学生を対象にしているので、1~2年後に来る実習生を受け持つ予定の方は、講習会の予定を確認し、参加できるように調整が必要です。
ちなみに、わたしは①の臨床実習指導者講習会を受講しました。この講習会も多数の応募があり、抽選で参加者が選ばれたとのことでした。
臨床実習1単位あたりの時間数
現行は、「臨床実習については、1単位を45時間の実習をもって構成すること」となっています。
改正後は、
1単位を40時間以上の実習をもって構成することとし、実習時間外に行う学修等がある場合にはその時間も含めて45時間以内とすること。
となります。
つまり、
- 実習時間内:8時間/日×週5日=40時間
- 実習時間外:1時間/日×週5日=5時間
- 合計:45時間以内/週
ということです。
これは、実際に学生も診療に参加し、実習時間内にスキルを磨き、問題を解決する「診療参加型実習」を進めていく上での変化だと感じます。
以前は見学主体の実習で、自宅に帰ってからデイリーノート、レポートやレジュメ作成、その他の課題を行っていました。しかし、見学だけでは実践的なスキルが身に付きにくいのが実情。
そのため、バイザーの指導・監督のもと、学生を診療に参加させることで、実習時間内で完結できるように転換が求められています。
実習時間にしっかり吸収した方が効率もいいと思います!
臨床実習施設に関する要件
実習地に関する要件に関しても変更があります。
- 実習全体の2/3以上を医療提供施設で行う
- 医療提供施設での実習について、2分の1以上は病院・診療所で実施
- 通所リハビリまたは訪問リハビリテーションに関する実習を1単位以上行う
医療提供施設とは病院、クリニック、介護老人保健施設等が含まれます。
一番の変化点としては、通所リハビリや訪問リハビリでの実習が必須になることです。
介護現場・生活期でのリハビリテーションの需要が高まっているので、自然な流れなのかもしれません。
この改定における変更は、2020年(平成32年)の入学生から対象となります。
診療参加型実習とは?今までの実習と何が違う?
また、今までの実習と異なり、これからは「診療参加型」の臨床実習にすることが求められてきます。
「診療参加型実習」とは、実習生もチームの一員として診療に参加するという考え方のもとで行う実習を指します。
また、ただ単なる知識・技能の習得や診療の経験だけでなく、実際の患者を相手にし、実際に現場に立った時に必要とされる思考・対応力を養うことを目的としています。
臨床実習における学生が行う理学療法行為の範囲
臨床実習における学生が行う理学療法行為の範囲については以下のように決められています。
- 患者に同意を得た上で行う
- 臨床実習指導者の指導・監督の上で行う
- 侵襲性がそれほど高くないと判断した行為はできる
- 臨床実習前に実習生の評価を行う
臨床実習において学生が行う理学療法行為
臨床実習で実際に学生が行うことができる理学療法行為については、基本的理学療法技術とされ、行為の侵襲性やリスクの程度から水準Ⅰ~Ⅲに分類されます。
- 水準Ⅰ:指導者の直接監視下で学生により実施されるべき項目
- 水準Ⅱ:指導者の補助として実施されるべき項目
- 水準Ⅲ:見学にとどめておくべき項目および状態
例えば、水準Ⅰに当てはまるものとして、基本動作の介助、体位変換、バイタルサイン測定、情報収集、問診、関節可動域検査や徒手筋力検査等の評価技術や基本的な理学療法治療技術(運動療法・物理療法)があります。
また、水準Ⅱは、急性期やリスクを伴う状態での水準Ⅰの項目や、ドレーンやカテーテル留置中の患者の管理、介護予防、訪問リハ、通所・入所リハビリテーションが含まれます。
水準Ⅲには、障害像・プログラム予後の説明、生活指導、患者教育などがあります。
実習においては、水準Ⅰは実習期間中にできるようになることが目標とされ、水準ⅡやⅢに関しては、卒後の臨床で徐々に独立してできるようになることを想定されています。
診療参加型実習における実習の進め方
先ほど説明した水準Ⅰ~Ⅲと、患者の状態や実習生の能力を総合的に判断して、学習段階を判断することが求められます。
実習の進め方
- 見学
- 協同参加(模倣)
- 監視(実施)
見学
まず、学生は指導者が実際に評価や治療を行っている場面を見学します。
指導者は、学生に注目してほしいポイントを予め説明しておくと良いでしょう。
協同参加
学生と指導者が一緒に評価や治療に参加します。
学生が主体的に行う中で、指導者は部分的にサポートし、フィードバックを行います。
監視(実施)
学生のみで評価や治療を行ってもらいます。(指導者の監視下で)
個々の患者さんの状態や学生の能力によって、見学までに留めておいた方がいい場合や、学生が主体的に参加できる場合があるので、指導者は適宜見極めをする必要があります。
【バイザーの立場から】学生指導で役に立った参考書
「診療参加型実習」を進めるにあたって、難しいと感じるのが「実際の理学療法の流れ」を実習生に伝えることではないでしょうか?
また、最近では症例レポートを必須課題としない養成校も増えており、指導者側は自分の時代の実習との違いを痛感しているのでは?
学生は、学校でどのように理学療法を進めていくか(評価から治療の流れ)について習っていると思います。しかし、実習となると、せっかく学校で習った知識や技術を活用できない学生に多く出会います。
また、指導者側も学生がどこでつまづいているのかを把握できていなかったり、どの程度まで指導すればいいか悩むことが多いのも事実です。
今回、実習生を担当するにあたって、「理学療法の流れ」をわかりやすく伝えるために、参考にしたのが、「6ステップで組み立てる理学療法臨床実習ガイド:臨床推論から症例報告の書き方まで」です。
今回の実習指導では、この書籍を実際に活用してみました。
実際に活用した指導者の立場で、この書籍のおすすめポイントを3つ上げます。
理学療法のプロセスを6つのステップに分割
実習に出る前には、学校で「理学療法のプロセス」について、習っていると思います。
しかし、もう少し複雑なプロセスを踏んでいるのが実際の臨床場面。
複雑にみえるプロセスを、時系列に沿って6つのステップに分割しています。
そして、1つのステップ毎に学習目標が定められています。
各ステップの学習目標
- ステップ1:事前準備
- ステップ2:目標の抽出
- ステップ3:仮説の立案
- ステップ4:問題点の抽出と優先順位の決定
- ステップ5:治療プログラム立案・実施
- ステップ6:効果判定
ですので、学生は今しなければいけないこと、指導者は学生に学習してほしいことが明確になるため、お互いの方向性がブレないようになっています。
各ステップにおいて学習することがわかりやすい
6つのステップに分け、各到達目標に達するために実施するべきことが明確に示されているのもポイントです。
各ステップの内容は、①学生自身が自己学習すること、②現場で実際に監視下で実施すること、③指導者と相談して理解すべきこと、に分かれています。
臨床推論を「三角ロジック」を用いてわかりやすく説明
学生が実習に出て難しいと感じるのが、「自分の意見を論理的に説明する」ことではないでしょうか?
自分の意見を論理的に説明するときに、手助けしてくれるのが、「三角ロジック」です。
三角ロジックは論理的思考の基盤となる考え方で、それをわかりやすく図に表したものです。三角ロジックには3つの要素があります。
それはClaim(クレーム)、Data(データ)、Warrant(ワラント)です。データとワラントによってクレームを論理的に説明することができます。(「6ステップで組み立てる理学療法臨床実習ガイド:臨床推論から症例報告の書き方まで」から引用)
理学療法の場面では、
- クレーム:自分の意見
- データ:検査・測定で得た結果
- ワラント:文献的知見(知識)
が入ります。
「三角ロジック」を用いることで、自分の意見を客観的事実や知識でサポートして、説明することができるようになります。
書籍では、学生が論理的な方法で学習目標に到達できるように、「三角ロジック」が各ステップで用いられています。
「三角ロジック」メリットは指導者にも
多くの学生は、クレームの根拠となるデータやワラントが不足していることが多いと感じます。その原因としては、論理的思考が身についていないからだと個人的には思います。
また、指導者も「三角ロジック」を身につけるメリットがあります。
それは、学生が三角ロジックのどの部分が不足しているかを明示できるからです。
「三角ロジック」を実際に活用した感想
実際に、実習生を担当したときに「三角ロジック」を使って指導をしました。
今回担当した学生は、歩行分析をする際に、正常歩行時の関節の動きに関する知識が不十分なため、検査測定結果とうまく照合することができていませんでした。
そのため、課題として歩行時の関節の動きを再度復習するように指導しました。
復習を促すと、自分がとった検査測定結果と合わせて、動作障害の仮説の立案を一緒に行うことができました。
このように、「三角ロジック」を活用することで、それぞれの学生の悩んでいるポイントに気付きやすくなり、指導しやすいと感じました。
PTの臨床実習が変わる?!知っておきたいポイント|まとめ
今回は、2020年養成校入学生を対象としたPT・OTの臨床実習のカリキュラムの変更点についてまとめました。
- 指導者は臨床経験5年以上、指導者講習会受講が必須。
- 通所・訪問リハビリに関する実習が必要になる。
- 診療参加型実習が今後主流となる。
理学療法士が働く医療・介護のシステムが大きく変わる中、現場で活躍できる人材を育てるために、臨床実習も今後変化していくことになるでしょう。
その流れに乗れるように、指導者講習会の受講や、今回紹介した書籍を活用することをおすすめします。
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